本会発足後10回に亘り、会員企業並びに関係企業の工場見学を行ってまいりましたが、本年度につきましては、高島会長(高田工業協業組合理事長)のご発案により、景気閉塞の中「新たな販路の開拓」「本会団結力アップ」を目的として、「海外研修」を計画・実施致しました。
行き先は、世界の不況にもかかわらず大きく発展を続ける今注目の中国、国際都市上海です。
「第一日目」ーーーCISCO社工場視察(含、関連SYNERGY社)ーーー
関西空港から定刻通り10時30分に一路中国に向けて離陸。天候も良く/楽しい会話が弾む中快適な空の旅を満喫。
予定通り現地時間12時(日本時間13時)に浦東空港に無事到着しました。
入国手続きも問題無く終わり、心配していた「現地専用ガイド(劉氏)」とのドッキングも想定通り入国ゲートで直ぐ解決。
劉氏との挨拶/紹介もそこそこに空港駐車場で待つこと10分、今回の旅でお世話になる専用バスが到着、お世辞にも綺麗な観光バスとは言えないが「こんなものか!」と無理やり納得しいよいよ本番スタート。
劉氏の中国/上海の自慢話しを耳にしながら上海の西隣接の江蘇省常熟市経済開発特区のCISCO社/SYNERGY社を目指す。
車窓から整備されたハイウエー/発達した町並みを眺めながら2時間30分、目的の経済特区に入ったが余りの広大さの為CISCO社が中々見つからず。車載ナビ/電話問合せのうえ予定より遅れやっとCISCO社に到着。
CISCO社概要: |
03年3月設立、総経理 桑原 康宏 |
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従業員数 |
80名、 工場面積 4,000m2 |
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製造品目 |
鋼管加工品(精密切断・センタレス研磨加工・旋削加工・ネジ加工)
鋳造品(SUS鋳造品・ダグタイル鋳鉄品) |
SYNERGY社概要: |
05年1月設立、総経理 桑原 康宏 |
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従業員数 |
218名、工場面積 4,000m2 |
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製造品目 |
防振ゴム用金具全般・ステアリング金具・ベアリング用内外輪切断品
ショックアブソーバー用アウターシェル/アイ |
超多忙の中、桑原総経理・辻村副総経理・山崎業務部長にご対応頂く。
<工場見学前の概要ご説明>
CISCO/SYNERGY社共に、自動車部品メーカーの前加工部品を月産250万個生産しており出荷先は85%が中国国内であり輸出対応は15%に過ぎない。(日本・英国・タイ・ポーランド)同社の目標は、徹底した品質指導の下、中国製素材を使用し日本製以上の部品を作ることである。それを達成するため品質保証部は外注指導にほぼ特化した業務を行っており、その厳しさから設立当時に購入していた素材メーカーは現在皆無である。
(同社の品質管理指導に付いて来れないメーカーは脱落)
これだけの徹底した素材メーカーへの外注指導を行っても、一定の品質を継続するのは難しく日本の素材メーカーの素晴らしさを痛感することが常である。
受け入れ検査に合格した素材を使用し、同じく徹底した品質管理の中で「切断加工」「ネジ切り加工」を行い社内不良率0.3〜0.7%に押さえ顧客の信頼を得ている。
<以上のご説明のあと加工現場にご案内頂く>
工場内では、女性社員を中心として多数の社員が所謂「人海戦術」の如く、バリ取り作業・洗浄前後作業・簡易計測作業を行っており、日本のロボット等を使用した自動化ラインとは異なる作業現場に違和感を覚えた。
各、製造現場見学の終了間近かに「TQC掲示板コーナー」に案内して頂き、ここで事前の「不良率の少なさ」に基づく「顧客信頼を勝ち取った」原因を発見した。
掲示されている「組織体制表」「TQC管理の各帳票」共に日本方式を取り入れられ、徹底した品質管理体制を構築されておられた。
<見学後の質疑応答>
・社員の出身地 |
−長江北の地域出身者が大半 |
・定着率 |
−かなり良い、3ヶ月〜1年在席すれば定着する |
・男女比率 |
−50:50、課長の半数は女性である。女性の方が真面目で良く出来る |
・自動化を図る計画は |
−日本製工作機械で中国製素材は加工出来ない(素材精度が悪く) |
・良品質の秘訣は |
−標準書/管理基準/組織共に日本式を採用している |
・検査項目は |
−外径/内径/長さ/同軸度/外観の5項目 |
・月の休業日数 |
−1日/月程度である |
・取引素材メーカー数は |
−アルミを含めメイン6社である |
・日本と比較してコストは |
−製作費は変わらない(人海戦術?)材料費がかなり安価である |
・社員の平均月収は |
−30、000円/人、また以前と変わり「賃金だけでは労働者を動かすことは出来ない」と判断し、年度末に特別賞与を査定により支払っている、「やりがい」の風潮が徐々ながら芽生えつつある |
<懇親会食>
本日お世話になった桑原総経理・山崎業務部長にもご参加願い、予めCISCO社殿に予約願っていた「菜蝶軒」(中華料理)で懇親会を開催。
桑原総経理のご苦労話/中国事情をお聞きしながら一時の懇親を楽しんだ。
クラウンプラザホテル(常熟市)泊
「第二日目」ーーー蘇州観光ーーー
7時50分にホテルフロント前にご集合願い「東洋のベニス」と名高い蘇州市観光に向かう。
<寒山寺>
唐代貞観年間(627〜649年)に高僧寒山が住んだことから寒山寺と呼ばれるようになった。唐代の詩人張継の「楓橋夜泊」にこの寺のことが詠まれ、一躍有名になった。明代に建てられた張継の詩碑も度重なる盗難で復元され、現在のものは清代光緒(1875〜1908年)に建てられたものが残されている。
平日とはいえ、有名な寺「寒山寺」中国各地からの観光客でかなり混雑。外塀にも「漢 詩」が書かれ流石中国との思いがする。暫し、俗世間のことを忘れ古寺を満喫した。
<運河めぐり>
「東洋のベニス」と呼ばれる蘇州の運河。古来、北京と杭州を結んだ京杭大運河が通るなど、水運もよく利用されている。
観光バスから降り、運河めぐりの船に乗り小一時間の風景を楽しんだ。繁華街を通る水幅は広く、庶民の住居が立ち並ぶ場所では船幅一杯しか水幅が無い。
運河両サイド共に、庶民の住居が立ち並び「生活用水を流す光景」「洗濯をしている光景」「野菜など食品を洗っている光景」が繰り返されロマンチックな気分に浸る情景では無く「東洋のベニス」にやや落胆。
<蘭莉園研究所(刺繍)>
蘇州は、中国でも有数の絹織物の産地、その影響で「刺繍」も盛んであり蘇州の女性は子どもの頃から「刺繍」の勉強をしているとのこと。
そういう前情報を聞き、研究所に一歩足を踏み入れた展示コーナーには、写真と見違える展示品がずらり、中でも「ダイアナ妃」をモチーフにした作品は圧巻、一本の糸の太さはミクロン・オーダー。
感嘆・感激しながら場内を廻っていたら、突然「隣に即売会場があります」とのアナウンス。買う気も無く会場を廻っていて気が付けば傍に「売り子」がぎっしり。「買って・買って」の連呼と共に売り子同士が客の取り合いで言い争い。折角の芸術品を見て感激していた気持ちが急に冷めつつ会場を退散。
<虎丘塔(アジア版ピザの斜塔)>
2000年の歴史を持つ「呉名第一の名勝」。春秋戦国時代、ここに呉王の夫差が父親を剣池に葬った。その3日後に白い虎が現れ墓の上に蹲っていたと言われるのがその名の由来である。
昼食前に「虎丘塔」に到着、塔を間近かに眺める為緩やかな上り坂を登ること5分、高さ47m八角七層の塔が目前に迫る。塔身が北に15度傾いている様子がはっきり分かる。400年ほど前から地盤沈下の為傾きだしたとのこと。
ここは、庭園も見ごたえがあり、何度も何度も振り返りながら塔を後にした。
<拙政園>
中国4名園の一つといわれる造園芸術の傑作。元は唐の詩人陸亀蒙の住居であったが、元代に大宏寺となった。その後明朝時代に王献臣という役人が官職を追放され、故郷に戻り寺を買い取り庭園にしたもの。名前の由来は、西晋の潘岳が「閑居賦」の一節で“拙者之為政”(愚かな者が政治を司る)から取ったもの。
面積4万m2の園内の3/5を池が占めており、池を中心に建物が水面に写るように建てられ、特に中央の遠香堂の眺めが最高である。
ただ、現在の中国の大気汚染の影響で「樹木に埃が積もり鮮やかな緑」で無かったことが残念であった。
<会食(上海蟹のフルコース)>
休憩の無いタイトなスケジュールでの「蘇州観光」で一行些かお疲れ気味。そんな中での今回の旅の最大の楽しみ「上海蟹のフルコース」の店(図安大酒店)に到着。円卓を囲みメインディッシュが出てくるまで中華料理に舌を打ちつつ歓談。
待つこと10分、テーブルに出てきた「上海蟹」は一皿8尾のみ、これで終わりとの店員説明。全員「話しが違う!」と言いつつも、この話題で反って盛り上がった。
会食の中盤、高島理事長の旧知、中国では豊田通商を傘下に置かれ活躍中のUFO(株)グループ:谷総経理が特別参加され「中国ビジネスのヒント」等貴重なお話しを頂いた。
ギャラクシーホテル(上海市)泊
「第三日目」ーーー上海市内観光・中国国際工業博覧会見学ーーー
いよいよ今回の視察旅行の最終日、前日同様7時50分にフロント前にご集合願い、上海市内観光「新森ビル」及び「中国国際工業博覧会」見学の為出発。
さあ「新森ビル」見学!と意気込んだ途端、ガイドから朝が早い為「中国茶の販売店」を案内した後に「新森ビル」にとのアナウンス。何か「してやられたり!」との心境、全て商売に結びつけようとの思いが感じられる。
<洪鴻茶藝館(お茶販売店)>
バスを降り館内に案内され、各団体毎に試飲コーナーで可愛い説明員の説明に耳を傾けながら中国高級茶を試飲。全ての説明/試飲が終わり何時も通り販売コーナーに全員足を運ぶ。ほぼ全員の方が「お土産ならこれ」との思いで購入しバスに乗車、茶館を後にした。
<新森ビル(上海環球金融中心ビル)>
発展する中国上海。その中でも発展が著しい上海浦東新区・金融貿易区に誕生したのが上海環球金融中心。森ビルグループのこれまでの都市づくりのノウハウを注ぎ込んだプロジェクトで完成したのが「新森ビル」地上101階、高さ492mの「垂直複合都市」。中には「国際金融センター」「世界中から集う商業施設」「高級ホテル」などがあり、上海におけるビジネス、文化、エンターテイメントの一大拠点。
バスを降り、見学者用エントランスから入場・空港さながらのボディーチェック/X線ゲートを通過。大勢の中国人観光者と共にエレベーターの順番を待つ。いよいよ搭乗、エレベーターのインジケーターは「階数」ではなく「地上からの高さ」を表示。ほとんど揺れの無い乗り心地、エレベーターメーカー名の表示無く、ガイド曰く「おそらく三菱電機製」とのこと。その話題が終わらないうちにエスカレーター経由展望最上階に到着。
展望階から眺める風景は、高層ビル群が立ち並ぶニューヨークマンハッタンを彷彿させ中国の底知れぬパワーを感じるが、残念なことに大気汚染で絶景が半減する。
展望階に展示してある「夜景」写真の素晴らしさを体験したかったと感じながら、帰りのエレベーターに搭乗した。
<中国国際工業博覧会>
今回の博覧会は「工業自動化展」「環境技術・設備展」「エネルギー展」「IT・通信技術展」「航空宇宙展」。上海新国際博覧センターでの展示会は、数回/月の割合で開催されている。
25元の入場料を支払い会場入り、メンバー思い思いの展示館に足を運んだ。見学時間が2時間弱の為ゆっくり見学出来ないもどかしさの中、日系企業の数社のメンバーに挨拶し、後日のコンタクトを約束した。
電機(含、計測)・機械共に、総じて日本の博覧会展示品と変わりがない。性能面の評価は不詳ながら、外観は日米欧製品と遜色が無い。ここでも中国の驚異的な発展/成長を感じた。
<リニアモーターカー(上海トランスラピッド)>
今回の視察旅行の締め括りは、世界初の商業運転をしている「リニアモーターカー」の体験乗車。このモーターカーは、現在「新国際博覧センター」のある竜陽路駅と浦東空港間の30kmを最高431kmの速さで結んでいる。
2002年に運転開始を始めたが、その投資額は1400億元であった。日本の新幹線には乗り慣れているものの「431km」のプロペラ機と同じ速度の地上移動物は初めての経験。
少し緊張しつつ出発の瞬間を待っていたが、定刻になりスマートな車輌が動き出す。
発車数分後、速度インジケーターが最高速を示し、車体は外の景色をデジカメで撮影出来ないような大きな揺れ。その速さに驚きつつも「脱線したら・・・」との思いが脳裏を過ぎる。日本のリニアモーターも1985年に筑波で走行に成功したものの中々実用運転に踏み切れないのが何となく理解が出来た。
7分20秒のあっという間の貴重な体験であった。
3日間の全てのスケジュールを終え、メンバー各々の思い出を胸に一路日本へ。
関空での再入国も問題なく終了し解散となった。 |